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名古屋高等裁判所 昭和54年(ラ)254号 決定 1980年6月06日

抗告人

加藤耕二

外一九六名

右代理人

由良久

外三名

相手方

右代表者法務大臣

倉石忠雄

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

本件抗告の趣旨並びに理由は、別紙即時抗告申立書及び抗告理由書の各写し<省略>記載のとおりである。

抗告人らの抗告理由の要旨は、原決定が原告たる抗告人らと被告たる水資源開発公団(以下単に公団という)との間に右公団の建設しようとしている長良川河口堰の設置について、民訴法三一二条三号後段にいう「法律関係」の存することを認めながら、右公団と一体視しうる密接な関係にある相手方国(建設省)と抗告人らとの間に右「法律関係」を認めなかつたのは不当であるという点に帰着する。

よつて按ずるに、水資源開発公団法の規定上相手方国とその認可し監督する特殊法人である被告公団との間に所論の各点につき相互の密接な関係があることは右法文によつて明らかである。

しかし、現行民訴法が文書の限定を通じて文書所持者と挙証者との利害を調整しようとしている趣旨にてらすときは、対立当事者以外の者の所持する文書の提出義務の範囲を拡張解釈するについては慎重を要すべく、抗告人らと公団との間の「法律関係」がたとへ肯認できるにせよ、相手方が被告公団と同一視すべき関係にあるとのあいまいな概念によつて被告公団と相手方国との間を架橋し、抗告人らと被告公団との間に認められた前記「法律関係」を訴訟当事者となつていない相手方国との間についても認め、その文書提出義務の根拠とすることは相当でない。そして、他に抗告人らと相手方との間に右「法律関係」が存することを認むべき資料は見出しえない。

よつて、相手方の所持する文書であるとして同法三一二条三号後段に基づき原決定別紙目録記載の各文書の提出を求める本件文書提出命令の申立は、その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを却下すべく、右と同旨の原決定は相当で本件抗告はその理由がないからこれを棄却することとし、抗告費用は抗告人らに負担させることとして主文のとおり決定する。

(村上悦雄 吉田宏 春日民雄)

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